連載:中村先生の眼瞼下垂講座⑤眼瞼下垂を進行させない予防方法とは?その原因・対策を徹底解説!

「最近、目が小さくなった気がする」「夕方になるとまぶたが重くてたまらない」…。そんな違和感は、眼瞼下垂(がんけんかすい)のサインかもしれません。
眼瞼下垂は加齢によるものと諦められがちですが、実は日々の生活習慣が大きく関係しています。本記事では、今すぐできる眼瞼下垂の予防法を徹底解説します。
第1章 眼瞼下垂の予防ができるタイプとできないタイプ
眼瞼下垂とは、まぶたを引き上げる力が弱まり、垂れ下がった状態を指します。しかし、すべてのケースで予防ができるわけではありません。まずは自分の状態がどのタイプに当てはまるかを知ることが、正しい対策の第一歩です。
1-1. 先天性・後天性・偽性眼瞼下垂の違い
眼瞼下垂は、大きく分けて以下の3つのタイプに分類されます。
| タイプ | 主な原因 | 予防の可否 |
| 先天性眼瞼下垂 | 生まれつき挙筋(まぶたを上げる筋肉)の発育不全 | 不可 |
| 後天性眼瞼下垂 | 加齢、コンタクトレンズ、目を擦るなどの生活習慣 | 可能 |
| 偽性眼瞼下垂 | まぶたの皮膚のたるみが原因(筋肉は正常) | 可能 |
予防において最も重要なのは、後天性(腱膜性)眼瞼下垂への対策です。
まぶたの中には、目を開ける筋肉である「眼瞼挙筋(がんけんきょきん)」と、それがまぶたの縁にある硬い組織(瞼板)につなぐ「腱膜(けんまく)」があります。
【ワンポイントアドバイス】
眼瞼下垂の予防の本質は、腱膜の伸びと剥がれを防ぐことにあります。一度伸びきったり、剥がれたりしてしまった腱膜は、どれだけセルフケアを頑張っても自力で元に戻ることはありません。
つまり、予防とは「まだ健康な腱膜を傷つけないように維持すること」を指すのです。
1-2. 眼瞼下垂になりやすい人の特徴

どのような人が後天性の眼瞼下垂になりやすいのでしょうか。主なリスク要因をまとめました。
- コンタクトレンズ(特にハード)の長期使用者
レンズの着脱時にまぶたを引っ張る動作や、まばたきのたびにレンズが裏側の腱膜をこすることが原因となります。 - 目を擦る癖がある人
アレルギー性結膜炎や花粉症などで目を頻繁に擦ると、腱膜が物理的に引き伸ばされます。 - アイプチ・アイテープの常用者
皮膚が引っ張られるだけでなく、接着剤による皮膚の炎症(かぶれ)が繰り返されることで、皮膚が厚く、重くなってしまいます。 - 長時間のVDT作業(スマホ・PC)
まばたきが減り、特定の筋肉を酷使することで、まぶたの周辺組織に負担がかかります。
【文献で辿るコンタクトレンズの影響】
ハードコンタクトレンズの長期装用は眼瞼下垂(まぶたのたれ)のリスク増加と関連していると報告されています。日本の症例対照研究では、ハードレンズ装用者は非装用者に比べて約20倍の発症リスクがあると報告されています(オッズ比19.9)*。また、複数研究のメタ解析でもハードレンズ装用者は非装用者より有意に高いリスクが示されています(オッズ比約17.4)**。これは、装脱時のまぶたへの繰り返し負担が眼瞼挙筋腱膜に影響すると考えられるためで、長年の使用ほどリスクが上がる傾向です。
第2章 眼瞼下垂のセルフチェック方法
「自分は大丈夫」と思っていても、無意識に症状をカバーしている場合があります。以下の方法で、現状のまぶたの状態を把握してみましょう。
2-1. 30秒でできる眼瞼下垂の自己診断方法
鏡を用意し、以下の手順でチェックを行ってください。
- 鏡を正面から見ます。
- 両方の眉毛を指で軽く押さえ、「おでこの力」を使えないように固定します。
- その状態で、ゆっくりと自然に目を開けてください。
【判定基準】
- 正常: 瞳孔(目の中央の黒い部分)がしっかり見えており、まぶたが1mm程度重なる程度。
- 軽度: 瞳孔の上部が少し隠れる。
- 中等度〜重度: 瞳孔の半分近く、あるいはそれ以上が隠れる。眉を押さえると目が開けにくい、開けられない。
2-2. 眼瞼下垂が引き起こす全身症状
眼瞼下垂は、単に「目が小さくなる」という見た目の問題だけではありません。まぶたが上がらない分、おでこの筋肉(前頭筋)を使って目を開けようとするため、全身に悪影響を及ぼします。
- 慢性的な頭痛・肩こり: おでこから頭頂部、肩にかけての筋肉が常に緊張状態になります。
- 自律神経の乱れ: 無理に目を開けようとすることで交感神経が優位になり続け、不眠やイライラを招くことがあります。
- おでこのシワ: 眉を引き上げる癖が定着し、深い横シワの原因になります。
第3章 眼瞼下垂を悪化させるNG習慣と正しい予防法
予防において最も大切なのは、余計なことをしないことです。良かれと思っているケアが、実は改善を妨げているケースが多々あります。
3-1. まぶたのマッサージは逆効果
小顔マッサージや目元の美顔ローラーを使っている方は注意が必要です。まぶたの皮膚は体の中で最も薄く、デリケートです。
- NG習慣: まぶたをゴシゴシ擦る、ローラーで圧をかける。
- リスク: 摩擦によって腱膜が伸びてしまう、または瞼内部に炎症が起こることで癒着が増強してまぶたの動きが悪くなる。
【正しいケア】
血流を良くしたい場合は、マッサージではなくホットアイマスクで温める方法を選びましょう。
【失敗事例】
パソコン作業が多く眼精疲労で目も開けづらくなってきた30代女性。次第に二重のラインがぼやけ、当院を受診したところ眼瞼下垂と診断。瞼内部の癒着が強く、眼精疲労に対するマッサージで原因の一部ではないかと推察された。
3-2. コンタクトレンズとアイプチの使用を見直す
コンタクトレンズ、特にハードレンズを長年使用している方は、眼瞼下垂のリスクが非常に高いことが分かっています。
- 脱着のコツ: まぶたの端を外側に強く引っ張って外す方法は、腱膜をダイレクトに傷つけます。専用のスポイトを使用するか、まぶたに負担をかけない外し方を眼科で相談しましょう。
- アイプチの罠: アイプチやアイテープは、無理やり皮膚を癒着させるため、剥がす際のダメージが蓄積します。「アイプチで二重にすれば目が大きく見える」のは一時的なもので、数年後には皮膚が伸びきって、より目が開けにくくなる恐れがあります。
【改善モニターの結果】
アイプチを1ヶ月完全に休止したモニター5名の調査では、全員が「まぶたの赤み・腫れ」が引き、そのうち3名は「以前より目がスムーズに開くようになった」と実感しています。
3-3. VDT作業と紫外線ダメージから目を守る
現代人にとって避けられないスマホやPC作業も、間接的な原因となります。
- まばたきの減少: 画面に集中すると、1分間のまばたきが通常20回から5回以下に激減。
- ドライアイと眼精疲労: 目の表面が乾き、ピント調節筋肉が疲弊。
- 無意識の負荷: 目が疲れると、眉間にシワを寄せたり目を細めたりして、まぶた周辺の筋肉に過度な負担がかかります。
さらに、紫外線も大きな敵です。紫外線を浴びることで、まぶたのハリを支えるコラーゲンやエラスチンが破壊され、皮膚のたるみ(偽眼瞼下垂)が加速します。
【今日からできる対策】
- 1時間に5分の休息: 遠くを眺め、意識的に「パチパチ」と強めにまばたきをする。
- UVカット: 夏場だけでなく、外出時はUVカット機能付きのサングラスや眼鏡を常用する。
第4章 医療機関での眼瞼下垂の予防と治療
セルフケアには限界があります。すでに症状が進んでいる場合や、予防の質を上げたい場合には、医療の力を借りるのが最も近道です。
5-1. 予防注射(ボトックス)
「手術をするほどではないが、おでこのシワが気になる」「目が疲れやすい」という段階で有効なのがボトックス注射です。
- 効果: おでこの過緊張を抑えることで、不自然な眉の跳ね上がりを防ぎ、表情を和らげます。
- メリット: 切らずに数分で完了し、ダウンタイムがほとんどありません。
- 注意点: 眼瞼下垂が進行している人が打つと、逆におでこの助けが使えなくなり「目が開かない」と感じる場合があるため、医師の診断が不可欠です。
東京都内の美容クリニックへの取材では、「ボトックスで下垂自体は治りませんが、眉を上げる癖をリセットすることで、将来の深いシワ予防として通う方が増えている」という回答が得られました。
5-2. 点眼治療
まぶたを持ち上げる主役は「眼瞼挙筋」です。ですがその筋肉の深部には同じように走行するもう一つの筋肉「ミュラー筋」があります。
ミュラー筋のα受容体に選択的に収縮する点眼薬「アップニーク®ミニ点眼液0.1%」が2025年12月22日に国内で初めて製造販売承認を取得しました。眼瞼下垂を根本から治療する薬ではありませんが軽度の眼瞼下垂の方の症状をここしばらく緩和する効果は見込めるものと考えられます。
薬剤情報
- 参天製薬より発売
- 1日1回点眼、点眼後8時間以上MRD-1の改善を認める
- 眼瞼そう痒症(112例中1例)が認められたが、重篤な副作用および投与中止に至った副作用は認められなかった
参考→参天製薬HP
5-3. 眼瞼下垂手術
重症化し、視界が狭まって日常生活に支障が出ている場合は、手術が唯一の根本解決策となります。
| 手術方法 | 特徴 | 適応 |
| 挙筋前転法 | 腱膜を瞼板に固定し直す。最も一般的。 | 重度の下垂・根本治療 |
| 埋没法 | 糸で留める。ダウンタイムが短い。 | 軽度の下垂・偽性眼瞼下垂 |
【院長義父の手術感想】
手術を受けた60代男性(院長義父)によると、「術後3日間はとんでもなく腫れてどうなってしまうか不安だった。目の開きやすさ自体は手術直後から改善して、1週間後の抜糸を終えた後くらいから腫れも引いてきてとても快適になってきた。世界が明るい!肩こりが消え、長年の呪縛から解き放たれた気分。」とのことでした。
第6章 眼瞼下垂は信頼できる専門医に受診しよう
最後に、いざ受診を決めた際の「失敗しない病院選び」について解説します。
6-1. 眼科と形成外科どちらを受診すべきか
「どちらに行けばいいの?」という質問が多いですが、判断基準は「何を優先したいか」です。
- 眼科: 「視機能」のプロ。ドライアイや眼精疲労、視野の欠損など、眼球そのものの健康を優先したい場合に適しています。
- 形成外科: 「構造と見た目」のプロ。まぶたの挙上だけでなく、二重のラインの美しさや左右差の調整を重視したい場合に適しています。
理想的なのは、眼科と形成外科が連携しているクリニックです。当院では連携する眼科クリニックへ紹介状を発行可能です。ご住所に合わせた通いやすい眼科クリニックのご提案が可能ですので、一貫した質の高いケアを提供可能です。
6-2. 後悔しないクリニック選びの5つのチェックポイント
カウンセリング時には、以下の項目を必ずチェックしてください。
- 症例写真の豊富さ: 自分と似た年齢、似たまぶたの症例があるか。
- デメリットの説明: 「腫れ」「左右差のリスク」「再発の可能性」を誠実に話してくれるか。
- カウンセリング時間: 希望と不安などをしっかり聴取し、医師本人が向き合ってくれるか。
- 費用の透明性: 保険適用か自由診療か、追加費用を含めた総額を提示してくれるか。
- アフターフォロー: 万が一の修正手術に対する方針が明確か。
カウンセリングを受けた際、「もし結果に満足できなかった場合、修正は可能ですか?」という質問に対し、具体的な術式と時期を即答してくれるクリニックは非常に高い信頼性があると言えます。
まとめ:まぶたを労わることは、一生の視界を守ること
眼瞼下垂は、加齢だけでなく私たちの「癖」や「習慣」によって引き起こされます。
- 目を擦らない。
- マッサージしすぎない。
- コンタクトレンズの扱いに気をつける。
今日からこの3つを意識するだけでも、10年後のあなたの目元は劇的に変わります。「おかしいな」と思ったら、手遅れになる前に、信頼できる専門医の門を叩いてみてください。
*Kitazawa T. Hard contact lens wear and the risk of acquired blepharoptosis: a case-control study. Eplasty. 2013 Jun 19;13:e30. PMID: 23826433; PMCID: PMC3690751.
**Hwang K, Kim JH. The Risk of Blepharoptosis in Contact Lens Wearers. J Craniofac Surg. 2015 Jul;26(5):e373-4. doi: 10.1097/SCS.0000000000001876. PMID: 26102541.