連載:中村先生の眼瞼下垂講座⑦眼瞼下垂手術の失敗確率はどのくらい?後悔しないためのリスクと対策を解説!

「まぶたが重くて視界が狭い」「肩こりや頭痛がひどい」…。こうした悩みを解消する眼瞼下垂手術ですが、いざ検討を始めると「もし失敗したら?」「不自然な顔になったらどうしよう」と不安が尽きないものです。
特に「手術の失敗確率」という言葉は、これから治療を考えている方にとって最も気になるキーワードではないでしょうか。本記事では、眼瞼下垂手術における正確なリスクデータや、実際の失敗事例、そして後悔しないためのクリニック選びの基準を詳しく解説します。
第1章 眼瞼下垂手術で失敗はどのくらいの確率?
手術を受ける前に知っておくべきは、医療に「絶対」はないという現実です。しかし、具体的な数値を知ることで、過度な恐怖を払拭し、適切な準備ができるようになります。
1-1. 失敗・再発する確率とは
結論からお伝えすると、眼瞼下垂手術において、再手術(修正手術)が必要になる確率は一般的に約30%前後と報告されています(教育研修講演5,眼瞼下垂,菅浩隆,形成総会2023)。つまり、3人に1人程度は何らかの理由で再度メスを入れる可能性があるということです。
若手もベテランドクターも、おおよそこの数字に収まってくるのですが、実はこの数字にはからくりがあります。それは、ベテランの先生であれば一ミリ以下の若手では直せなかったようなものも治せてしまうからリオペを小さな修正でもしているからではないか、と考えられています。もちろんリオペ率が低いに越したことはありません。それを成し遂げる簡単な方法は「術後経過を見ない」ことです。抜糸したら、はいオシマイ。リオペ率0%も可能です。
ですので、純粋にリオペ率だけでは手術の上手さは測れないのです!
会心の一撃的な。たまたまバッチリ仕上がることはなんなら、新人先生の初めての眼瞼下垂手術だって起こりえます。どんなトラブルの元が眠っていても火をつけずに解決させる。トラブルが起きたとしても今度こそは解決させる。サルベージ力が真のオペの上手さだと言えます。
さて、ではこの「30%」という数字をどう捉えるべきでしょうか。以下の表に、再手術が必要となる主な背景をまとめました。
| 再手術の要因 | 内容 | 発生の性質 |
| 医学的な限界 | 術後の癒着や筋肉の戻りによる再発 | 不可避な側面がある |
| 手技によるミス | 左右差の著しい乖離、過矯正(上げすぎ) | 医師の技術に起因 |
| 経年変化 | 加齢に伴いまぶたの皮膚が再び垂れる | 自然な老化現象 |
特に重要なのは、手術直後は完璧でも、数年〜数十年かけてまぶたの挙筋や皮膚が再び緩む、生理的な再発が含まれている点です。一方で、術後すぐの「イメージ違い」や「機能不全」は、医師の手技や事前のシミュレーション不足が原因となります。
1-2. 失敗する主な3つの要因
なぜ、失敗や後悔が生じてしまうのでしょうか。その要因は主に以下の3つに集約されます。
- 医師の技術不足と経験値の低さ
眼瞼下垂はミリ単位の調整が求められる繊細な手術です。まぶたを挙げる「挙筋腱膜」の固定位置や二重の食い込みの強さ、二重の幅がわずかにずれるだけで、見た目として結果に響いてしまいます。 - 不適切な術式選択
まぶたの厚み、脂肪の量、挙筋の筋力は人によって千差万別です。それらを考慮せず、画一的な術式(例:重度の下垂なのに切らない術式を選択するなど)を適用すると、十分な改善が得られません。 - 術前のシミュレーション不足
「目が開けば良い」と考える医師と、「美しく二重にしたい」と考える患者の間でゴールが共有されていないケースです。解剖学的な特徴を無視して無理なデザインを作ると、機能的なトラブルを招くリスクが高まります。
第2章 眼瞼下垂手術で起こる失敗事例
具体的にどのような状態が「失敗」と呼ばれるのか、代表的な事例を解説します。
2-1. 左右差・不自然な二重・三角目
外見に関するトラブルは、患者さんの精神的なストレスが最も大きい部分です。
- 左右差: 人間の顔はもともと左右非対称ですが、術後に片方だけ極端に開きが強かったり、二重の幅が違ったりするケースです。
- 不自然な二重: 切開ラインが深すぎると、いわゆるハム目のように食い込みが強く、整形したことが一目でわかるような不自然な仕上がりになります。
- 三角目: まぶたの中央だけを強く引き上げすぎると、目頭や目尻が置いていかれ、目が三角形のような形になってしまうことがあります。
これらは、機能回復だけを重視し、審美的な視点を欠いた手術で起こりがちです。
2-2. 閉じない目(兎眼)・ドライアイ・視力変化
機能面での失敗は、日常生活に支障をきたすため深刻です。
- 閉じない目(兎眼:とがん): まぶたを上げすぎてしまい、寝ている間も目が完全に閉じきらない状態です。
- 深刻なドライアイ: 目が閉じにくくなることで角膜が乾燥し、強い痛みや充血を引き起こします。術後に「目が乾いて夜も眠れない」と相談に来る患者さんも少なくありません。
- 視力の変化: まぶたの張力が変わることで、一時的に乱視が出たり、視力が変わったように感じたりすることがあります。
2-3. 引かない腫れ・目立つ傷跡・内出血
術後の経過に伴うトラブルも無視できません。
- 長引く腫れ: 通常、大きな腫れは2週間程度で落ち着きますが、内部組織のダメージが大きいと半年以上腫れが引かない(ダウンタイムの長期化)ことがあります。
- 目立つ傷跡: 縫合が丁寧でない場合や、体質によって傷跡が凸凹に残ってしまうケースです。
- 内出血: 術中の止血が不十分だと、広範囲に青あざが広がり、回復に時間を要します。
第3章 眼瞼下垂で失敗しないためのクリニック選び
失敗の確率を最小限に抑えるためには、病院選びがすべてと言っても過言ではありません。
3-1. 形成外科専門医か?症例数は豊富か?

眼瞼下垂手術は「形成外科」の領域です。まずは、執刀医が日本形成外科学会の専門医であるかどうかを確認しましょう。
良い医師を見分けるためのカウンセリング質問集
- 「私のまぶたの状態には、なぜこの術式がベストなのですか?」
- 「先生が過去に経験した中で、再手術になったケースはどのようなものですか?」
- 「万が一、左右差が出た場合の保証制度や修正対応はどうなっていますか?」
これらの質問に対し、リスクも含めて包み隠さず丁寧に答えてくれる医師は信頼に値します。
3-2. 保険適用と自費(自由診療)の違いを正しく理解する
「安く済むから保険で」という安易な選択は、後悔の元になることがあります。両者の違いを正しく理解しましょう。
| 項目 | 保険診療 | 自由診療(自費) |
| 目的 | 機能改善(視野の確保) | 機能改善 + 審美性の追求 |
| 仕上がり | 二重の幅や形の希望は通りにくい | 細かなデザインの指定が可能 |
| 費用 | 3割負担で約5〜6万円程度 | 30〜60万円程度(幅がある) |
| 保証 | 原則としてなし | 再手術の保証制度がある場合が多い |
「目が開けば見た目はこだわらない」のであれば保険診療が適していますが、「理想の目元にしたい」という希望がある場合は、美容外科的な視点を持つ自由診療のクリニックを検討するのが賢明です。
第4章 眼瞼下垂で後悔しないための術前にできること
手術の成功率は、執刀医の技術だけでなく、患者側の「事前準備」によっても大きく変わります。医師との認識のズレをなくし、リスクを最小限に抑えるためのポイントを整理しましょう。
4-1. 理想の仕上がりを医師と共有する具体的な方法
「ぱっちりさせたい」「自然にしたい」といった抽象的な言葉は、人によって解釈が異なります。医師とのミスマッチを防ぐために、以下のステップを実践してください。
- 「なりたい目」と「なりたくない目」の写真を持参する
雑誌の切り抜きやSNSの画像で、理想の形を視覚的に伝えます。同時に、避けたいデザイン(例:広すぎる二重幅など)も提示すると、医師はより明確なゴールを設定できます。
- シミュレーションで「眉の位置」を確認する
鏡を見ながら、まぶたを上げたときに眉毛がどれくらい下がるか(おでこの緊張が取れるか)を医師と確認してください。これによって、術後の顔の印象の変化を予測できます。
- 「何ミリ」という数字にこだわりすぎない
「二重幅を7ミリに」といった数字での指定は、まぶたの厚みによって見え方が変わるため危険です。数字よりも「見た目のバランス」を重視し、医師のアドバイスに耳を傾けましょう。
4-2. 術後の過ごし方で決まる!ダウンタイムの管理術
手術が無事に終わっても、その後のケア次第で腫れや傷跡の残り方が変わります。特に術後3日間が勝負です。
- うっ血の予防 術後寝転んでいたりするとうっ血して瞼は腫れやすくなります。なるべく頭は高い位置で過ごしてください。うつ伏せで寝たりすることは厳に慎みましょう。
- 血流を上げすぎない生活 術後数日間は、激しい運動、長風呂、飲酒を控えましょう。血流が良くなりすぎると、腫れが強く出たり、傷口が開いたりする原因になります。
- まぶたに触れない・こすらない 無意識に目をこする癖がある方、眉を引き上げて目を開ける方は要注意です。挙筋を固定した糸が外れたり、組織の癒着がうまくいかなくなったりするリスクがあります。コンタクトレンズの使用再開時期も、必ず医師の指示に従ってください。
第5章 眼瞼下垂で失敗した時の修正手術と対処法
もし「失敗したかもしれない」と感じたとき、すぐに別のクリニックへ駆け込むのは禁物です。正しい対処のステップを知っておきましょう。
5-1. 修正手術を検討するタイミングは「術後半年」が目安
手術直後の左右差や腫れを見て「失敗だ!」と早急に判断してはいけません。まぶたの組織は非常に繊細で、内部の腫れが完全に引き、組織が柔らかく安定するまでには最低でも3ヶ月から半年かかります。
- 待つべきケース: 左右のわずかな開き方の差、一時的な閉じにくさ、傷跡の赤みなど。
- 早期修正が必要なケース: 角膜が露出して激しい痛みがある場合や、視力に明らかな異常が出た場合など。
早すぎる修正手術は、組織が硬い状態で行うため難易度が高まり、かえって事態を悪化させるリスクがあります。まずは執刀医に相談し、経過を観察することが大切です。
5-2. 他院修正を受け入れるクリニックの探し方
万が一、執刀医との信頼関係が崩れてしまった場合は、セカンドオピニオンを検討します。ただし、他院の修正は初回の手術よりも高度な技術を要するため、以下の基準でクリニックを選びましょう。
- 「他院修正専門外来」があるか: 修正を専門的に扱っている医師は、癒着した組織を剥がすなどの難しい手技に長けています。
- 事前の精密なカウンセリング: なぜ前回失敗したのか、解剖学的な原因をロジカルに説明してくれる医師を選んでください。
- 現実的なゴール提示: 「100%元通りになります」という甘い言葉ではなく、現状からどこまで改善可能か、リスクを含めて誠実に話してくれるかどうかが決め手です。
第6章 納得のいく眼瞼下垂手術を受けよう
最後に、手術への不安を解消するための総括をお伝えします。
6-1. リスクとメリットを天秤にかけ、一歩踏み出すために
眼瞼下垂手術の失敗確率はゼロではありません。しかし、正しい知識を持ち、信頼できる医師を選ぶことで、そのリスクは限りなく最小化できます。
実際に手術を受けた方の多くは、「視界が明るくなった」「長年の頭痛から解放された」「表情が若々しくなった」と、QOL(生活の質)の向上を実感しています。
恐怖から治療を諦めるのではなく、正しく備えることで、明るい視界と快適な毎日を手に入れることができます。
眼瞼下垂手術にありがちな誤解
Q:手術をすれば二度とまぶたは下がってきませんか?
A:残念ながら、加齢による老化を止めることはできません。手術で筋肉を固定しても、数十年後には皮膚のたるみなどで再度下垂する可能性はあります。
Q:失敗したら元に戻せますか?
A:切開を伴う手術の場合、完全に「元通り」にすることは難しいです。だからこそ、最初のクリニック選びと、術前の慎重なシミュレーションが極めて重要になります。
Q:手術はすごく痛いですか?
A:局所麻酔を行うため、術中に痛みを感じることはほとんどありません。術後の痛みも鎮痛剤でコントロールできる範囲内であることが一般的です。