連載:中村先生の眼瞼下垂講座①眼瞼下垂はアイプチで治る?悪化原因と手術・予防法を徹底解説!

第1章 眼瞼下垂って何?
「最近、目が小さくなった気がする」「夕方になるとまぶたが重くて疲れる」…。そんな違和感の正体は、もしかしたら「眼瞼下垂(がんけんかすい)」かもしれません。まずは、眼瞼下垂がどのような状態を指すのか、正しく理解しましょう。
1-1. まぶたが開きにくくなる「眼瞼下垂」とは

眼瞼下垂とは、目を開ける時に使う「眼瞼挙筋(がんけんきょきん)」という筋肉や、その筋肉とまぶたをつなぐ「腱膜(けんまく)」が緩んだり外れたりすることで、まぶたが十分に上がらなくなる状態を指します。
診断の基準として用いられるのが、「MRD(Marginal Reflex Distance)-1」という数値です。
- 正常な状態: 黒目の中心から上まぶたの縁までの距離が4〜5mm程度。黒目の8割以上が見えています。
- 眼瞼下垂の状態: 黒目の見える範囲が5〜6割程度に減少。MRDが小さくなるほど重症と判定されます。
「単なる疲れ目」と放置されがちですが、進行すると自力で目をパッチリ開けることが困難になる進行性の症状です。
1-2. 眼瞼下垂は2つのタイプ
眼瞼下垂には、大きく分けて「先天性」と「後天性」の2つのタイプがあります。
| タイプ | 主な原因 | 特徴 |
| 先天性 | 生まれつきの筋肉の発達不足 | 乳幼児期から症状が見られる |
| 後天性 | 加齢、コンタクト、生活習慣 | 基本的には40代ぐらいから 20〜30代の若年層にも急増中 |
特に注目すべきは、近年の若年層における「後天性」の増加です。あるクリニックのデータでは、20〜30代の患者の約6割が「ハードコンタクトレンズの10年以上の使用」や「アイプチを毎日3時間以上使用」していたという実態が明らかになっています。スマホの長時間利用による眼精疲労も、まぶたへの負担を加速させる要因となっています。
1-3. 放っておくとどうなる?
眼瞼下垂は単に見た目が眠そうに見えるだけでなく、全身の健康に悪影響を及ぼします。まぶたが上がらないと視野が狭くなるため、無意識におでこの筋肉(前頭筋)を使ってまぶたを持ち上げようとするからです。
この無理な体の使い方が、以下の症状を引き起こします。
- おでこの深いシワ: 20代でも眉間や額にシワが刻まれます。
- 慢性的な頭痛・肩こり: 筋肉の過緊張が神経を圧迫します。
- 自律神経の乱れ: 常に努力して目を開けている状態がストレスとなります。
実際、頭痛症状を伴う眼瞼下垂患者さんの8割以上の方で眼瞼下垂手術によって症状が消失したとの報告もあり*、まぶたの不調は全身の不調に直結していることがわかります。
第2章 アイプチで眼瞼下垂は治る?治らない?
「二重になれば目が大きく開くはず」と考え、アイプチやアイテープを使い続ける方が多くいます。しかし、医学的な観点から見ると、これは大きな誤解です。
2-1. アイプチでは治らないと言われる理由
結論からお伝えすると、アイプチで眼瞼下垂が治ることはありません。
アイプチは皮膚の表面を接着して「二重のライン」を疑似的に作っているだけであり、まぶたの内部にある「筋肉の緩み」という根本原因には一切アプローチできないからです。
- 見た目の変化: 二重には見えるが、まぶたの重さは変わらない。
- 機能の限界: 視野の狭窄(きょうさく)は改善されず、接着剤によるかぶれによって皮膚が伸びる可能性がある。
「二重になれば解決する」と信じて来院される患者様は月に15名以上にのぼりますが、アイプチによって視野が改善された例は残念ながらゼロです。
2-2. 自力で治せる眼瞼下垂と治せない眼瞼下垂
眼瞼下垂には「真性(しんせい)」と「偽性(ぎせい)」があり、セルフケアの可否が異なります。
- 偽性眼瞼下垂(皮膚のたるみが原因)
筋肉は正常ですが、余った皮膚が覆い被さっている状態。皮膚切除などで対応可能です。アイプチや埋没法など皮膚をたくし上げる施術で部分的な改善が見込めます。 - 真性眼瞼下垂(筋肉・腱膜の緩みが原因)
目を開けるメカニズム自体が不全な状態。手術以外に治す方法はありません。
巷で紹介されている「眼瞼下垂改善トレーニング」や「強力マッサージ」は、むしろ腱膜をさらに伸ばしてしまうリスクがあるため注意が必要です。以下の初期症状に心当たりがある場合は、早めの専門医受診をおすすめします。
【患者が自覚する初期症状TOP3】
1位:おでこのシワが増えた
2位:夕方に目が重く、開けにくい
3位:いつものアイプチの効きが悪くなった
第3章 アイプチが眼瞼下垂の原因になる3つの理由

良かれと思って使っているアイプチが、実は眼瞼下垂を悪化させる最大の原因になっているケースが多々あります。その深刻な3つの理由を解説します。
3-1. 【理由①】筋肉と腱膜が伸びて緩んでしまう
アイプチでまぶたを固定すると、まぶたには常に「引き下げられる力」と「持ち上げようとする力」の相反する負荷がかかります。毎日この引っ張り合いを続けることで、眼瞼挙筋と瞼板(けんばん)をつなぐデリケートな腱膜(けんまく)がゴムのように伸びきってしまうのです。
あるアイプチ歴15年の患者様の手術所見では、腱膜が通常の1.5倍にまで伸びており、通常よりもしっかりと腱膜を引き出して固定をし直す処置が必要になった症例もありました。
3-2. 【理由②】皮膚が伸びてたるみが悪化する
アイプチの強力な接着剤を塗り、夜にそれを剥がす。この接着と剥離の繰り返しは、まぶたの皮膚にとって過酷なダメージです。
- 皮膚の菲薄化(ひはくか): 皮膚が薄く、デロデロに伸びてしまいます。
- たるみの悪循環: 伸びた皮膚が重りとなり、目を開けるのにより大きな力が必要になります。
アイプチ常用者の皮膚は薄くなったり、伸びたり、カブれたりしていることがあります。ここまで皮膚がダメージを受けると、将来いざ二重整形の手術をしようと思っても、理想のラインが作りにくくなるという大きなリスクを抱えることになります。
3-3. 【理由③】炎症やかぶれで組織が硬くなる
これが最も深刻な副作用です。接着剤による「かぶれ(接触性皮膚炎)」を繰り返すと、まぶたの内部組織が炎症によって線維化し、ガチガチに硬くなったり癒着したりします。
炎症を繰り返したまぶたでは、手軽な埋没法ではそもそも二重が作れず、最初から切開法への変更が必要になるケースがしばしば見られます。一度硬くなった組織を元の柔軟な状態に戻すことは非常に困難なのです。
3-4. アイプチ以外の選択肢:医療用テープは使える?
どうしてもアイプチ等で二重を作りたい場合の代替案として、医療用テープ(サージカルテープ)の活用があります。
3Mのマイクロポアなど、肌に優しい医療用テープを細く切って使用する方法です。
- メリット: 皮膚の癒着を防ぎやすく、炎症のリスクを抑えられる。
- デメリット: 根本治療ではない。夕方に剥がれやすい。
剥がす際は、決して無理に引っ張らず、ワセリンやオイルを馴染ませて「浮かせて取る」ことを徹底してください。これはあくまで手術までの「一時的な対症療法」であることを忘れないようにしましょう。
第4章 すぐにできる眼瞼下垂の5つの予防
一度伸びてしまった筋肉を自力で戻すことはできませんが、今以上の悪化を防ぐことは可能です。今日から取り入れられる5つの予防習慣をご紹介します。
4-1. 【予防①】目を強くこすらない
腱膜を緩ませる最大の外的要因は「摩擦」です。特に花粉症の方や、毎日のクレンジングでゴシゴシ擦る癖がある方は要注意です。
アイメイクを落とす際は、アイメイク専用リムーバーを活用しましょう。
- ポイント: コットンにたっぷりのリムーバーを含ませ、まぶたの上に30秒置きます。
- 動作: 「滑らせる」のではなく「押さえて吸い取る」イメージで行ってください。
美容外科医の間では、ビフェスタやヒロインメイクなどの洗浄力の高いリムーバーを使い、摩擦時間を最短にすることが推奨されています。
4-2. 【予防②】ハードコンタクトは長期使用しない
意外かもしれませんが、ハードコンタクトレンズの使用は眼瞼下垂の大きなリスク因子です。着脱の際にまぶたを外側に引っ張る動作が、長年積み重なることで筋肉を固定する部分を外してしまうのです。
多くの論文で、コンタクト歴が長期にわたると軽度以上の眼瞼下垂が有意に増加すると報告されています。
10年以上使用している方は、眼科医と相談の上、ソフトレンズやワンデータイプへの切り替え、あるいはICLやレーシックなどの視力矯正を検討するのも一つの予防策です。
4-3. 【予防③】目元の強いマッサージは避ける
「目がむくんでいるから」と、まぶたを強く押し流していませんか?まぶたの皮膚は体の中で最も薄く、強いマッサージは皮膚のたるみと腱膜の伸びを加速させます。
- NG習慣: まぶたを上下に引っ張る、指先で強く圧迫する。
- 正しいケア: むくみが気になる時は、目の周囲ではなくこめかみや頬骨の下のツボをやさしく押すのが効果的です。
4-4. 【予防④】スマホ・パソコンの使いすぎに注意
長時間の画面凝視は、まぶたの裏側にあるミュラー筋に過度な緊張を強います。これが続くと眼精疲労が蓄積し、まぶたが重くなる原因となります。
アメリカ眼科学会も推奨する「20-20-20ルール」を取り入れましょう。
- 20分ごとに
- 20フィート(約6メートル)先を
- 20秒間眺める
1日8時間以上PC作業をする人は、4時間未満の人に比べて眼瞼下垂の発症率が約2.3倍というデータもあります。意識的な休息が目を守ります。
4-5. 【予防⑤】アイプチの使用頻度を減らす
完全にやめるのが難しくても、使用頻度を下げるだけで皮膚の回復力は変わります。
週7日使用している方は、まずは週3日まで減らしてみましょう。半年後には皮膚の柔軟性が改善し、炎症の頻度も半減するという報告があります。自宅にいる時間はノーメイクで過ごし、まぶたを物理的な刺激から解放してあげることが重要です。
第5章 眼瞼下垂の手術は?種類・費用・リスク
セルフケアでは限界がある場合、外科的な処置が選択肢となります。自分にどの方法が合うのか、費用の目安と共に確認していきましょう。
5-1. 保険診療と自由診療の違い・費用の目安
眼瞼下垂の手術には「保険適用」と「自由診療(全額自己負担)」の2種類があります。
| 項目 | 保険診療 | 自由診療(美容外科) |
| 目的 | 視野の確保・機能回復 | 機能回復 + 美しい仕上がり |
| 費用の目安 | 両目:約8万円程度(3割負担) | 両目:約40〜50万円 |
| デザイン | 機能回復の範疇である程度 | 幅や形を細かくオーダー可能 |
「とにかく楽に目を開けたい」なら保険診療、「左右差をなくし、理想の二重ラインにしたい」なら自由診療が適しています。
5-2. 主な手術方法①:挙筋前転法・挙筋短縮法
緩んだ筋肉や腱膜を縫い縮め、固定し直す最もスタンダードな手術です。
- 特徴: 切開を伴うため、効果は半永久的。
- ダウンタイム: 1〜2週間。術後3日目をピークに腫れや内出血が出ますが、1週間後の抜糸を終えればメイクで隠せる程度に落ち着きます。
5-3. 主な手術方法②:埋没法(切らない方法)
医療用の細い糸をまぶたの裏側に通し、筋肉を固定する方法です。
- 特徴: 腫れが少なく、ダウンタイムは3〜5日と短い。
- リスク:強力な固定ではないため、数年〜10年で戻る可能性があります。また、アイプチで皮膚が癒着している場合、糸が外れるリスクが高くな るため、医師の慎重な判断が必要です
5-4. 主な手術方法③:余分な皮膚を切除する方法
主に「偽性眼瞼下垂」の方に適した方法で、眉毛の下(眉下切開)や二重ラインに沿って余った皮膚を取り除きます。
今の二重のデザインを大きく変えずに、まぶたの重みだけを解消できるのがメリットです。傷跡も3ヶ月程度でほぼ目立たなくなります。
5-5. アイプチ常用者が手術で直面する問題
長期のアイプチ使用者は、手術難易度が上がることがあります。
慢性的な炎症によって皮膚と内部の組織が癒着していると、手術中に「どの層が筋肉か」を見極めるのが難しくなるためです。通常より手術時間が長引いたり、埋没法を希望しても切開法への変更を打診されたりすることがあります。カウンセリング時には必ずアイプチ歴を正確に伝えてください。
第6章 後悔しないクリニック選び!確認すべきポイントと次のステップ
「手術をして逆に不自然になったらどうしよう」という不安を解消するには、クリニック選びが非常に重要です。
6-1. 形成外科専門医の資格があるか確認する
まぶたの解剖学に精通している日本形成外科学会認定 形成外科専門医が在籍しているかを確認しましょう。この資格は、5年以上の専門研修と厳しい試験を突破した医師にのみ与えられるもので、全国に約3,500名しかいません。機能回復と見た目の美しさを両立させる技術力の目安となります。
6-2. アイプチ常用者の症例写真が豊富にあるか
「アイプチで皮膚が伸びてしまったケース」の症例写真があるかをチェックしてください。
- チェック項目: 術前・術後だけでなく、1ヶ月・3ヶ月後の経過が載っているか。
- アングル: 正面だけでなく、伏し目や横顔の写真があるクリニックは、仕上がりの自然さに自信がある証拠です。
6-3. 無料カウンセリングで必ず確認すべき5項目
後悔しないために、以下の5点は必ず質問しましょう。
- リスクや失敗例の説明: 良い面だけでなく、左右差や再発のリスクを話してくれるか。
- アフターケア体制: 万が一の修正や、無料検診の回数。
- 費用の内訳: 麻酔代や薬代が別途かからないか。
- ダウンタイムの実態: 自分の仕事や生活に支障がない期間か。
- 術式の根拠: なぜその手術方法が自分に最適なのか。
6-4. カウンセリング時に伝えるべきアイプチ歴の情報
医師が最適な術式を判断できるよう、以下の情報をメモしておきましょう。
- アイプチ・アイテープの使用期間(◯年)
- 1日の平均使用時間
- 過去にかぶれや炎症を起こした頻度
- 現在の悩み(肩こりがひどい、おでこのシワが気になる等)
正直に申告しなかったことで、術中に予想外の癒着が見つかり、手術時間が大幅に延長してしまったケースも存在します。
6-5. まとめ:眼瞼下垂かも?と思ったら次にすべきこと
「目が重い」「アイプチが効かなくなった」と感じたら、まずは一人で悩まずに、専門医の診察を受けて「診断」を確定させることが第一歩です。
軽度であれば本記事で紹介した予防法で進行を遅らせることができます。中等度以上であれば、手術によってQOL(生活の質)が向上する可能性があります。
まずは無料カウンセリングを活用し、あなたのまぶたの「現在の状態」を正しく知ることから始めてみませんか?